老人ホーム、競売で入居者が無権原に? さいたま地裁本庁2023年5月24日開札

老人ホーム、競売で入居者が無権原に? さいたま地裁本庁2023年5月24日開札

加須市にある、11人が入居中の老人ホームが競売で落札となった。前回2022年12月7日の開札でも入札の対象となっていたがこの時は延期となり、今回再び期間入札に付されたのだが、前回売却時との大きな違いがあった。前回は賃借人である運営会社の一棟全体の賃借権が、競売での買受人に対抗できるものであり、すなわち居住者は引き続き居住することができた。それが、所有者と運営会社の間の賃貸借契約の解除により賃借権が消滅し、入居者の占有権原について買受人に対する対抗力が失われてしまった。所在は加須市富士見町、東武伊勢崎線加須駅300m。別業種である所有者会社が平成27年に地方銀行からの融資で建設し、そのまま老人福祉施設の運営会社に期間30年間という長期間の契約で賃貸し、老人ホームとして運営されていた。約1億3千万円の債権額で銀行が抵当権を設定していたが競売となり、売却基準価額6391万円で期間入札に付された。開札結果は入札4本、9300万円で個人名での落札、次順位買受申出人も個人名で9000万999円。運営会社である元賃借人は県内で複数の施設を運用している法人なので、入居者が路頭に迷うといった最悪の事態はないとは思うが、多少なりとも入居者にとって不安定な状態になることは十分に考えられる。このように所有者が融資を受けで建物を建て、老人福祉関係の企業が建物を賃借して運用するケースは老人ホームなどでは少なくはない。

(続報)
5月24日開札での最高価買受申出人の個人名は、代金納付をしなかった模様で10月4日開札のスケジュールで再度期間入札に付されたところ、この日の開札では入札3本、県内の宅建業者が77,777,000円で落札、最高価に次ぐ入札金額は56,168,168円でした。

さいたま地裁本庁 2023年5月24日開札 令和4(ケ)13号事件

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