不動産競売物件、下降傾向から一変、首都圏全域で入札数が急増  ~エステートタイムズが2020年下期の 1都3県不動産競売統計を発表~

不動産競売物件、下降傾向から一変、首都圏全域で入札数が急増  ~エステートタイムズが2020年下期の 1都3県不動産競売統計を発表~

■概況

関東エリア1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の不動産競売物件の動向は、一時よりも入札本数は減少し、上昇していた落札価格も沈静していました。昨年4月9日からの緊急事態宣言により各地方裁判所で競売手続きが期日変更となり、東京23区を管轄する東京地裁本庁では4月~7月まで不動産競売の売却(開札)が行われなかったなど、各裁判所で2020年上期は例年よりも売却の回数が少なくなりました。その後売却が再開され2020年下期は首都圏全ての都県で入札本数が急増し、落札率と落札価格も上昇に転じました。

■入札状況 ~入札本数が急増、落札率も再び上昇~

1都3県では高い落札率が長く続いていますが、2019年頃からやや落札率が下落して多少の物件が不売となっていました。しかし、2020年下期は首都圏1都7県全てで落札率が上昇しました。東京都はほぼ全物件が落札となる23区に比べ、多摩地区を管轄の東京地裁立川支部の落札率が低くなりますが、今回は94.9%(プラス8.2ポイント)と大きく上昇、他にも横浜地裁川崎支部(川崎市)、横浜地裁本庁(横浜市、藤沢市、茅ヶ崎市ほか)、千葉地裁松戸支部(松戸市、柏市、流山市ほか)などで95%程度と高い落札率で、ごく一部の支部を除き85%を上回っています。また1都3県以外では、栃木県82.8%(プラス8.6ポイント)、茨城県80.8%(プラス3.2ポイント)、群馬県79.6%(プラス0.3ポイント)、山梨県72.5%(プラス12.5ポイント)と各県で落札となった物件が増えています。特に、茨城県の南部が管轄地域の水戸地裁土浦支部(つくば市、土浦市、石岡市ほか)は92.0%(プラス0.11ポイント)、水戸地裁龍ケ崎支部(取手市、牛久市、龍ケ崎市ほか)は88.2%(マイナス0.01ポイント)、群馬県の南東部の前橋地裁太田支部(太田市、館林市ほか)は89.5%(プラス0.01ポイント)と高い落札率でした。

今回、落札率以上に入札本数が大きく増加しました。1都3県では全ての本庁と支部で落札物件の平均入札本数が増加、特に東京地裁本庁、千葉地裁松戸支部、千葉地裁本庁、横浜地裁本庁、横浜地裁相模原支部では1物件に対する入札本数が平均10本を超えています。首都圏の他県の増加幅も大きく、群馬県が9.4本(プラス2.7本)、茨城県7.2本(プラス1.9本)、栃木県7.0本(プラス2.5本)、山梨県4.5本(プラス1.1本)でした。本庁支部単位では特に前橋地裁本庁(前橋市、伊勢崎市、渋川市ほか)が平均入札本数11.9本(プラス6.1本)、水戸地裁龍ケ崎支部が10.5本(プラス5.2本)、前橋地裁高崎支部(高崎市、藤岡市、安中市ほか)が9.8本(プラス4.1本)で入札本数が増えました。(落札率は期間入札の公告に付された物件中、取下等で開札の対象外となった物件を除いた落札物件の割合、増減の比較は2020年上期との対比)。

■物件価格 ~落札価格も上昇、都内よりも郊外で顕著~

落札率の上昇、入札本数の増加とともに落札価格も上昇しました。特に郊外で大きく落札価格が上昇し、都県別では埼玉県と千葉県で上昇、東京都はやや上昇、神奈川県はわずかに下落しました。入札本数と落札価格は似たかたちで推移しますが、東京地裁本庁では入札本数が大きく増加したにもかかわらず、落札価格の上昇は小幅で、マンションの1平方メートルあたりの落札価格も上期が56.5万円、下期が55.2万円とほぼ同じでした。隣接する東京地裁立川支部(多摩地区)でも入札数は増加していますが価格の上昇はわずか、さらに、横浜地裁本庁(横浜市、藤沢市、茅ヶ崎市ほか)及び横浜地裁川崎支部(川崎市)では入札本数が増加したにもかかわらず落札価格が下落しています。一方、1都3県で落札価格が最も上昇したのは千葉地裁松戸支部でプラス0.27ポイントの1.71倍でした。千葉県では松戸支部以外の競売事件は全て千葉本庁で取り扱われますが、その中でも、佐倉支部(佐倉市、成田市、四街道市ほか)管轄では落札価格の中央値が1.79倍(プラス0.12ポイント)とさらに上昇、一方、千葉市よりも遠方の木更津支部(木更津市、君津市、袖ケ浦市ほか)、八日市場支部(銚子市、旭市、東金市ほか)、一宮支部(茂原市、いすみ市、勝浦市ほか)では価格が下落しました。他に落札価格の上昇幅が大きかった地域はさいたま地裁熊谷支部(熊谷市、深谷市、行田市ほか)、さいたま地裁川越支部(所沢市、川越市、狭山市ほか)、横浜地裁相模原支部(相模原市、座間市)などの都内とは隣接していない地域でした。1都3県以外はさらに落札価格が大きく上昇した地域が多く、特に前橋地裁高崎支部は1.88倍(プラス0.54ポイント)、水戸地裁下妻支部(古河市、筑西市、常総市ほか)は1.69倍(プラス0.31ポイント)、水戸地裁本庁(水戸市、日立市、ひたちなか市ほか)は1.55倍(プラス0.3ポイント)と大きく価格が上がり、他の大部分の本庁・支部でも落札額が上がりました(落札価格は売却基準価額との乖離の中央値)。

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