新型コロナの影響による緊急事態宣言に伴い中止されていた不動産競売の売却だが、2020年7月29日横浜地方裁判所川崎支部では3月18日以来4ヶ月ぶりに開札期日が実施された。この日の開札では170通の入札書のうち何と25通が無効入札であった。通常の開札では無効入札はそれほど多いものではなく、買受可能価額よりも低い金額で入札してしまった場合や、入札者の資格証明の提出を怠った場合、農地の買受に適格証明が無い場合などが無効となるが、それでもそれほどに遭遇するものではない。ところがこの日の開札では1割どころか、約15%の入札が無効だったのである。
今回、このようなことが起きた理由は、今年の4月施行の改正民事執行法により、新たな必要書類が加わったことによる。必要書類が増えたことは比較的知られていたが、内容に少々わかりにくい点があり、記入を誤ってしまうケースや、これまで法人の代表者名のみでよかったものが、今回からは役員全員の名簿が必要になった。そのため、どこの裁判所でも無効入札が頻出している。
多くの入札者が戸惑ったところに、「自己の計算において私に買受けの申出をさせようとする者は,別紙記載のとおりです。」のチェック欄があり、通常はここにマークをすると無効の原因となってしまう。この部分は、「他人の指図で私は入札していますが、指図をしているのは暴力団等はありません」といった意味だが、そのようなケースは稀であるが、書面の文言が一読してわかりにくいことと、チェック欄が「私は,暴力団員等ではありません。」と近い位置にあるので、誤ってマークしてしまうようだ。無効入札の場合は当然、たとえ最も高い金額で入札しても入札に加えられない。いましばらくは、無効入札で悔しい思いをする人が続きそうである。