■概況
新型コロナウイルス感染症の感染拡大による経済活動の停滞による影響で、当初一部では競売市場では物件数が増加し、購入意欲は低下し価格が下落するという予想もありました。しかし、物件数は減少し入札数が激増、価格が高騰し続けています。
■期間入札物件数 ~申立・競売開始物件が減り、入札物件数が減少~
1都3県で期間入札に付された物件数は、2021年上期とくらべ約80%と大幅に減少しました。近年期間入札の物件数はやや減少しつつも大きくは変化していませんでしたが、この間の減少の理由のひとつには競売開始決定の後、競売での売却よりも前に取下となる物件が増えたことがありました。しかし、2020年の新型コロナウイルス感染拡大による1回目の緊急事態宣言以降は、住宅ローンを中心とした抵当権の実行がそれほど進んでおらず、競売開始となる物件数自体が減少しています。そのため、競売開始物件数の指標となる配当要求終期等の公告に付された物件のうち強制競売事件はわずかに増加していますが、担保不動産競売事件が減少しており、1都3県の2021年の配当要求終期の公告物件数は新型コロナウイルス感染拡大前の2019年と比べると約20%減少しました。
■入札状況 ~入札数はコロナ前に比べ増加し、落札価格が高騰~
2010年以降高い落札率が続いていますが、2021年下期は東京都と千葉県では落札率が99%まで上昇し、1都3県の大部分の本庁と支部で落札率が上昇しました。入札本数も引き続き増加し、各都県で落札となった1物件あたりの平均入札本数は13~14本と過去10年では最大となりました。同様に落札価格も大きく上昇し、全ての本庁と支部で上昇して千葉県では売却基準価額に対する落札価格の中央値が2倍に達しました。各都県で土地付建物、マンションといった物件の種類に限らず、2020年下期から入札本数の増加と落札価格の上昇が続いており、東京都区部のマンションの落札価格の中央値は前回の60.0万円/平方メートルから今回71.2万円/平方メートルとさらに上昇しました。1都3県以外の首都圏エリア(茨城県、栃木県、群馬県、山梨県)では緊急事態宣言後の一昨年2020年下期は1都3県同様に入札本数が増加し落札価格が上昇しましたが、その後は一部の支部を除いて横ばいから減少下落傾向となっています。